2017年1月29日
剣岳遠近(おちこち)
見上げれば 凍れるオブジェ 早月尾根1900メートル付近から

 標高によって木の種類や樹形が変わる早月尾根の面白さは、35回でも書いた。額から流れ落ちる汗をぬぐいながら登る急坂に、寡黙にたたずむネズコやキタゴヨウの大木やタテヤマスギの巨木に見とれてしまう。何百年も前から風雪に耐え抜いてきた生命力に惹(ひ)かれるからだろうか。

 写真は早月尾根を下山の途中、ほっと一息ついて頭上を見上げたら、凍(い)てついたシラビソやツガの針葉樹が「オブジェ」のような様相に見えてカメラを向けた。

 季節季節、周りの山々が見えなくても、通い慣れた登山道の木々たちは時に優しく語りかけてくる――。