八ツ峰1峰から5峰へ縦走しはじめた頃、快晴だった空は、谷間からガスが湧いて山々を隠しはじめた。
昼近くになると辺りの景色は白いベールに包まれていた。気まぐれなガスは晴れて、私たち3人が5峰に着いた時には、山頂から稜線(りょう・せん)にかけての岩峰が見えはじめた。
白い雲の流れは幻想的なシンフォニーを奏でているようにも感じ、映画「劔岳 点の記」で見た雄大な大自然の眺めや厳しさを回想させた。
山にはそれぞれに感じる音楽がある。「アルビノーニのアダージョ」もその一つ。冷え込む季節の夜長にほろ酔い気分で聴くのもいい。