画面左右を二分する光と陰の対比が面白かった。
屹立(きつ・りつ)した岩壁を彩る紅葉、暗い岩肌の谷底には、秋になってもまだ白く残る万年雪が、人里遠く離れた「場所」を物語っていた。
谷を登り詰めれば北方稜線(りょう・せん)のルートにもなる三ノ窓に至るが、上部は雲で隠れてよく見えない。反対側には、立山・剱岳の三つの氷河で最も大きな三ノ窓氷河。天を突く険難な谷を覆う雲の流れは目まぐるしい。
「一寸の光陰」のごとく、撮影には気を抜けない。唯一、重苦しい光景を救ってくれたのは雲間から射(さ)した光の束――。女神のような崇高な光でもあった。