砂防堰堤(えん・てい)を白いレースのカーテンのように流れ落ちる水に、一本の冬木を背景にして早春の剱を重ね合わせてみた。シンプルな構図で色彩にも乏しいが、「動と静」の世界で変化を付けた。
難しかったのは、主役の被写体(剱)に近寄りすぎても離れすぎてもバランスがとれないことだった。季節が進めば、枯れ木が芽吹き、緑葉をつけると、この景色のイメージも一転、がらりと変わるだろう。
ある時は、堰堤の上をカモシカが悠々と歩いている姿を見たことなど、同じ場所に何度でも足を運べば、風景写真には終わりがない。