剱岳の頂上がバラ色に輝いていた。それは黄金の冠を戴(いただ)いたように威厳に満ちた、剱岳の朝の表情であった。
(新田次郎「剱岳〈点の記〉」)
山頂が「冠」に見えるのは室堂平や立山三山、別山尾根などの南方から見ると丸みを帯びているから。
写真は朝光の新雪に覆われた剱の頂。いつ、どこから見ても厳しい表情の剱は、立山曼荼羅(まん・だ・ら)では赤鬼や青鬼が登場し、本地は不動明王。その不動明王でも時には優しい一面を見せるひとときがある。
それがこのショット。鬼の目にも涙かなとも思う。