2015年5月10日
剣岳遠近(おちこち)
天突く側壁の間 雪塊を下る 池ノ谷左俣から

剱岳周辺の谷で面白いのが「谷」の呼び方。「たん」または「だん」「だに」など、人それぞれ独特の響きが聞こえてくる。写真の池ノ谷左俣は、剱尾根(左)と小窓尾根(右)の側壁が天に突き上げ、三ノ窓に至る。49回目に掲載された作品と正反対に、きれいな雪のデブリ(雪崩で落ちた雪塊)を下る2人の仲間をモデルに、谷のスケール感や高度感が伝わればという思いで撮った。

 谷は雪庇(せっ・ぴ)の崩壊や落石がたてる不気味な音が絶え間なく聞こえる。急峻(きゅう・しゅん)な狭い谷の廊下を抜け、白萩川の清流沿いを下れば馬場島。そこは目映(ま・ばゆ)い新緑と人里の臭いがプンプンし、人心地つく。