写真は、鋭い岩峰群が立ち並ぶ峻烈(しゅん・れつ)な剱尾根や小窓尾根の一部を望遠レンズで造形的に切り取ってみた。
時間が経つにつれ、紺碧(こん・ぺき)の空に氷雪に覆われた小窓ノ王(左の奧)や剱尾根の中心をなすドーム南壁(右の岩陵)がアーベントロート(夕映え)の中に染まる。
ナイロンザイルが切れてパートナーを失う井上靖の小説「氷壁」がおもい浮かぶ。奈落の底には剱岳本峰の北側に剱尾根によって二分される池ノ谷(たん)がある。
ここはすべての者を圧倒し拒む、究極の世界。