11月下旬、立山黒部アルペンルートも終了間際、雪をかき分けながら国見岳に登った。
剱が夕日で紅(あか)く染まった後、山裾に白い雲のベールが漂い、空がバラ色にほのかに染まった。静かに暮れゆく黄昏(たそ・がれ)、優しさに包まれた時間が流れる。
いつもは厳しいはずの剱も、時として笑みを浮かべる貴婦人のような姿を見せることがある。
さまざまな場所から、季節が変われば、剱は七変化する。不思議がいっぱい詰まった山である。