先週、北アルプスの名峰、鹿島槍ケ岳への拠点となる冷池山荘に泊まった。翌朝、ヘッドランプをたよりに霜柱で凍った道を歩く。

　尾根に出ると景色が開け、月が剱の上に煌々（こう・こう）と照り、東の空は白々と朝焼けが始まっていた。途中、鹿島槍の山頂を目指す登山者を横目に、標高２６８３メートルの布引岳で三脚にカメラをセットする。

　剱に浮かぶ満月と背後に雲海から昇る朝日とのコラボは至宝の世界。月影に沈んでいた剱の山塊がにわかに紅（あか）く染まり、反対に白い月は三ノ窓の空へ薄れていった。