2011年7月9日
立山連峰季節のたより
立山カルデラに咲く

天空を荒々しい岩壁の岩山がぐるりと取り囲み、所々赤茶けたむき出しの岩肌が痛々しい。対照的に、新緑のダケカンバに囲まれた湿原には池塘(ちとう)がある。残雪からの雪解け水が小さな川になって蛇行して流れ、その流れに沿ってミズバショウが群生して咲いている。ここは立山カルデラにある泥鰌(どじょう)池から小一時間ほど登った高台に広がる湿原だ。

立山カルデラとは太古の昔、立山火山が何度も噴火を起こしてできた爆裂火口といわれ、東西6.5`、南北4.5`の巨大な窪地。かつては立山温泉という湯治場があり、江戸時代から栄えた。明治時代には立山登山の基地にもなり、昭和初期の頃までにぎわっていたという。しかし、1969(昭和44)年の大水害で登山道が壊滅し、廃業に至った。

過去には地震による崖崩れや土石流、雪崩など、自然災害が幾度も重なり、多くの犠牲者が出た歴史が刻まれている。現在立山カルデラは砂防工事が行なわれ、関係者以外一般には立ち入りができない。

写真撮影した日は高曇りで、林の中からはウグイスやカッコウなど野鳥のコーラスに混じってハルゼミの鳴き声が賑やかだった。平和なひととき、別天地からは山の稜線(りょうせん)がくっきりと見えていた。

撮影データ ペンタックスLX フィッシュアイレンズF2.8 F5.6 1/125秒
ベルビア100F(RVPF)