四季折々、幾度か試みた剱の空撮で、いつか撮りたいと思い描いていたアングルがいまここにある。近づきすぎても、遠すぎてもいけない距離感はパイロットとの阿吽(あうん)の呼吸。
「この高度で少しずつ山に近寄ってください」「了解!」
三ノ窓雪渓に切れ落ちる八ツ峰の雪壁に釘付けになる。右端上部の本峰から左下に延びるのが源次郎尾根の1峰、2峰、下部の谷は長次郎雪渓で、一番左奥が前剱。機体はゆっくり水平を保ったまま移動しながら、3台のカメラでシャッターを切っていく。どこを狙ってもスキがない――それが剱の正体。