日の出前、剱の頭にレンズ雲がぽつんと一つ浮かんでいた。雲は大小を繰り返しながら形を変える。剱の稜線(りょう・せん)から、待っていた朝日がこぼれ出ると、美しい彩雲になった。
富山県生まれの童話作家、大井冷光の「雲の子供」に、富山日報の記者として立山・室堂で一夏を過ごした体験を元に、雲が誕生する様子を描いたユニークな文章がある。称名滝の飛沫(ひ・まつ)から白い雲の子供が生まれ、弥陀ケ原を低くはい回り、しずしずと立山の峰に登る――。
雲は捉え方次第で適度なアクセントや、時には童画的な趣を与えてくれる。