標高2750メートルの別山乗越には、私が以前勤めていた剱御前小舎がある。
山小屋は立山のふもとにある芦峅寺が所有し、そのため経営者も変わるのが常だ。古きよき時代、ここでいろんな山人との出会いがあり、また、私を家族のように可愛がってくれた山小屋のオヤジさんも幾人か亡くなり、ビンボーカメラマンの肩身も狭くなってしまった。
写真は十数年前の11月上旬、小屋閉めまぢか、朝日に輝いた瞬間を待って撮った新雪の剱。厳しさの中に身を置いて撮影するからこそ、山はよりいっそうきれいになって見える気がする。