小窓尾根から生還してきたパーティーが早月尾根を下りてきた。すれちがう彼らの顔は皆それぞれ一様に満足感に満ちあふれていた。
剱岳の魅力は何だろう? 誰もが抱く不安や怖さ、にあるのではないだろうか?
富山弁では「おっとろしい」というが、人はその怖さゆえ謙虚になり、また、恐(こわ)いもの見たさに惹(ひ)かれるような心理が働く。そんな恐怖心や不安に打ち勝って山頂を極めたときの醍醐味(だい・ご・み)、達成感、至福の時間。
あるガイドの言葉が印象的だった。「もし、剱という山から『危険』がなくなったら何の魅力があるのか?」と。