2021年9月19日

 

剣岳遠近(おちこち)

気まぐれな自然 一瞬の出合い  馬場島から

 霧は刻一刻、形を変え剱の山裾をおおい隠していった。まるで生き物のように変幻自在、突然現れたかと思うといつのまにか消えてしまう。

 高校1年の時、授業で詩人・草野心平の詩「蛙のゐる風景」で霧の擬人法を習った。高原一面をはい、谷間をうめつくし流れていく霧。面白さ、不思議さが記憶に残っている。

 自然の一角を凝視する姿勢は写真も同じだ。剱の頂は暗雲につつまれていたが、突然雲間から一条の光が射(さ)し、その一瞬だけを狙って撮った。「なぜこんなにも魅了されるのか?」。勝手気まぐれ、腹立たしいが、時に思いもよらない感動の出合いがあり虜(とりこ)になってしまう。